カプチーノ

「自分がされて嫌なことを人にするな」
この言葉,言われたことがある人はどれくらいいるでしょうか.私は何度となく聞きました.特に子供の頃,小学校時代はよく耳にした気がします.人に意地悪をしたりからかったり,そういうことを先生がとがめる時に「自分がされて嫌なことを人にしてはいけません!」って,こんなふうに言う先生が必ずいました.

じゃあ,自分は気にならないことでも,人によっては傷つくことってあると思うのですが,それはどうなるの?誰が分かるの?自分しか分かってあげられないの?って思うのです.

人の痛みを分かることは,自分中心から離れることです.

自分がされて嫌なことをしない,確かにそうです.でもここで止まっていてはいけない気がします.人の心を理解する時に,自我ほど邪魔なものはないのかもしれません.でもそんなものはどこかに置いておけばいい.大切なことは,相手の心を真剣に思い,感じ,理解し,イーブンな関係になること.イーブンとは,1 kg = 1000 g ということではありません.英語のイーブン(even)には,公平・対等だけでなく,「穏やかだ」という意味があるんです.


  今度逢うときはコートも要らないと
  そんなに普通に云えちゃうのが理解からない
  ミルクの白に茶色が負けている
  何よりもあなたに逢って触れたいの
  全て味わって確かめてイーヴンな関係になりたい

                         「カプチーノ」より
                         詞:椎名林檎

 

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閃光少女・解釈編

閃光少女は,2007年11月に発売された東京事変の新曲です.プロモーションビデオ(PV)でのみの発表で,CD版はなしという,JPOP界では稀な仕様.2007年のライブで先行披露されました.スバルのステラという車のCMに使われています.

ずいぶん前にこのブログで,この閃光少女のPVが衝撃的で印象的で,でもすごく難解だったので,「この曲を解釈したい」と勢いで書いたのですが...そのせいで「閃光少女 解釈」というキーワード検索で,このブログに来訪される方が度々おられます....スミマセン...その後すっかりさぼっていたので,何の見解も書いていませんでした.ということで,「閃光少女」を私なりに解釈したいと思います.

全歌詞を書きたかったのですが,厳密には著作権にかかわるので,リンクにします.
http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND57649/index.html

閃光少女の歌詞を考える時,「過去」「現在」「未来」という時間の流れ,そして詳細に歌詞を読んでいくと見えてくる曲の1番と2番の内容の相違,この二点がこの曲のテーマを紐解く重要な鍵だと感じます.

1番で最も核となるフレーズは「現在を最高値で通過していこう」という部分でしょう.
「今が確かなら万事快調」
「明日には(今日のことを)全く憶えていなくたっていい」
「明日まで電池を残す考えなんて無い」
「昨日の予想が(今日の)感度を奪う」
こういう言葉たちから,「現在」の重要性を強く感じます.今を生きることの意味が大切.過去を見て,それよりも今がより快調であればいい.未来についてはわざわざ考えないので,ここで未来は想定されていないかに見えますが,「現在=最高値」が続けば,これは未来が悪くなることはないでしょうから,右肩上がりのイメージを感じます.

一方,これが2番の歌詞では一転します.
「現在がどんな昨日より好調よ」
で始まるため,1番を受けて同じ内容かと一瞬思ってしまうのですが,すぐに,
「明日からはそう(現在が好調だと)思えなくてもいい」
と完全に打ち消してきます.
とてもさりげないですが,実は1番の前向きさは,2番では完全否定されているのです.

展開部(サビ)においても,1番と2番では全くイメージが変わります.1番では,
「切り取ってよ 一瞬の光を」
「写真機はいらないわ 五感を持っておいで」
です.確かで最高である「現在」という一瞬を切り取るのです.とてもポジティブなイメージを受けます.また注目したいのは,「切り取ってよ」というフレーズ.つまり語りかけている相手がいる,切り取る作業をする誰かが存在するのです.
一方,2番の展開部は,
「焼きついてよ 一瞬の光で」
「またとない命を 使い切っていくから」
です.焼きつく,そこに焼きついて残る.つまり残っていくものが大切な感じです.先の未来に進んで行く自分の未来は明るいとは思えず,だから現在を焼きつけ残すイメージを感じます.さらに,1番と違い語りかけている相手は存在していません.「切り取る」というのは,誰かの行為でしたが,「焼きつく」というのは現象です.現象として焼きつけよ,と言っているか,願望として焼きついて欲しいと言っている感じです.もっと言うなら,焼きついてくれないから,焼きついて,と願っているようでもあります.命をつかいきっていくのだから.

まとめるとこうなります.
1番:現在を最高値で通過する.つまり人生は右肩上がりで,未来は明るいイメージ.ただし,「がむしゃら」「無計画性」のような日本独特のイメージを感じます.
2番:未来は明るいとは限らない.ならば,今(好調である現在)こそ焼き付いて,という願い.欲求.今の私をちゃんと認識して,という欲求.1番とは180度違う世界観です.

これは,日本において女性が少女から大人になっていく過程で感じざるを得ない(もしくは無意識的に感受する)感覚ではないかと思います.私は確信的にそう感じるのですが,一般的にはどうなのでしょうか.私はこのブログでも日本のジェンダーについていくつか記事を書いていますが,現在の日本という社会は女性にとって明るい未来を感じにくいです.その現実を,絶対にどこかで知ることになります.非常に悲しい歌で,涙なしには聞けないという方もいることでしょう.椎名林檎さんの歌詞からは,日本のジェンダーを感じることが多いですが,それをうまくオブラートに包んでおられるように感じます.私がこうやってブログでごちゃごちゃ言うと,とげとげしくなりますから.苦笑

さて,プロモーションビデオ(PV)です.



2人の女性が登場します.ひとりは制服を着た女子高生,もうひとりは少し背の高い私服の女性.2人は鏡像関係の動きの後,左右反対方向に走りだします.この2人は友人同士だと解釈することもできますし,現在の自分が制服の少女で,もうひとりが(実現しない)もう一人の(理想の)自分だとも解釈できます.解釈は多面的に可能ですが,いずれにせよ,このPVの注目すべきシーンは,私服の女性が最後に一瞬で消えていくシーンだと思います.その消滅の瞬間,それが見えていないはずの制服の少女が振り返るシーンは印象的です.これは,対称に動いていた2人が,ひとりが消滅した途端に,残された少女の動きが自由になったように感じます.つまり,消えた私服の女性は,制服の女性を束縛していた存在のようにも受け取れますが,ここの感じ方も人それぞれでしょう.ただ,自由といっても,行き先の見えない自由であり,制服という俗物が,見えない束縛の象徴のように映像に映ります.

ところで,このPVからは,「閃光」という物理現象と「少女」という生身の人間が曲のタイトルとなっている意味を強く感じます.理論物理的には,時空間を超えて影響を与え合う二つの素粒子(量子もつれの状態にある素粒子)から,ひとつの状態が観察されてしまって(もちろん現在の日本,制服の少女の方です),もうひとつの可能性が消滅する残酷なシーンを描いているように感じます.すごく哲学的なPVだと感じます.おそらく,物理学的な素養(ややSF的であっても)がある方が,クリエイターの中にいるのではないかとさえ感じますが,もし,そういう考えなくこのPVの映像ができているのなら,それはそれで,とても考えさせられることですね.全く異なるフィールドから,類似の世界観が生まれている,というか...

私は何を言っているんでしょう.笑 こんなこと考えているのは私だけなんでしょうね,きっと.

関連記事:「ジェンダー」
      :「未舗装路」
      :「見落とされる倫理観」
      :「閃光少女」

 


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鞄の中身

いつか死ぬとき,「つまらない人生だったな」とは思いたくありません.でも,どうして自分一人だけでこの目標が達成できるでしょうか.人は一人では生きていくことができない,などという言葉は日本ではよく耳にしますが,それは決してありがちな寂しさを紛らわす意味ではなく,この社会というものが,多くの人々が互いに真に係わり合うことを本当は必要としているという意味だと捉えます.人間は利己的でありながら,その利己的行動によってもたらされるものが,失うものを超えているとは限りません....


   I’ve got all these things packed in may bag
   And what’s inside here is a secret I won’t share
   They’d embarrass me so please don’t ask
   If I were dying they’d be personal effects

     (私の鞄には沢山のものが詰め込まれている
      その中身を何時も他人には内緒にしている
      恥ずかしいもので埋め尽くされているのに
      突然死を迎えた場合にそれらが遺品となる)

   Pointless things just put strain on my back
   I’ll pack regard for you down in my bag alone
   If a car should hit me as I cross
   They’ll be no keepsakes to embarrass me again

     (持ち歩いて患う価値がなければ
      相手への敬意だけを携えて行く
      万が一交差点で轢かれたとしても
      詰まらぬ物が散らからずにすむ)

                「鞄の中身」より
                  詞:椎名林檎
                  英詞:Robbie Clark


 

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お笑いブーム

日本において,お笑いは必ず暗い時代に台頭し世の中に受け入れられてきたということは,歴史を振り返ればまぎれもない事実です.これは,世の中の人間が,暗い時代を乗り越えるために「笑い」を必要とするということもあるでしょうが,暗い時代には笑いのネタがそこらじゅうに転がっていて,笑えるネタがたくさん創れてしまうという意味でもあるでしょう.「お笑いには人間のみっともなさやおろかさが最もにじみ出ている」のだそうです.

http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000158888880769

全くもって私もそう思います.本当は自分たちの姿を見ているんですよね.確かに最近のお笑いブームに乗じてテレビに登場する芸人たちは,お世辞にも昔からの落語家や漫才師のような品や芸術性を感じることは難しいです.しかし,そのような芸質も現代の世相を反映しているという気がします.大衆に受けてもらわないとお笑いは成立しないので...ですから,狂言に出てくる世界観と現在の若手ピン芸人が創りだす世界観を比べたら,世の中の価値観がどう変わったのかがよく分かるはずです.

私は,お笑いがとても好きなので,テレビが芸人をビジネスとして利用しているだろうことには腹が立ちます.まあ,それは百歩譲って仕方ないことだとしましょう.がしかし,芸人さんの芸が寄ってたかって採点されて,ベルトコンベヤのような物に乗せられて退場していくテレビ番組の様を見ていて,もう涙が出そうなくらい悲しくなりました.人間としてもはや扱われていないのか.みんな笑ってましたが...苦笑 これも現代の世相なんでしょうね.

ところで,私がとても注意しなくてはいけないと思っているのは,お笑いが女性の間で特に指示されているという事実です.(日本では女性がさまざまなブームを巻き起こしますが,これも単にそのひとつ,と片付けるのはちょっと軽率だという気がします.)男性の中には現在のお笑いを「くだらん.ばかばかしい.」と思っている人が少なからずいますが,女性に聞いて「面白くないよね」という人はほとんどいません.男性の中で,特にお笑いに嫌悪感を抱いている人は,芸のネタの中に自分の姿があるかもしれませんよ,だからむかつくのかもしれません.上に書いたように,お笑いは暗い世相を反映するとすれば,男性は能天気でいられて,そして女性はとても暗く感じている世の中なのでしょう,これは憂うべき事態です.現代を生きる日本人女性にとって「法の下だけの平等」はもう限界に達しています.ことある度に女性への敬意のない「少子化対策」という冷たい単語が飛び交い,そのたびに女性はストレスを感じることでしょう.ジェンダーフリー論者も保守派も,揚げ足取りをやるばかりです.日本人女性は過去よりもいっそう日本のどこにも居場所がなくなりつつあるのです.この内容は今後,よく言葉を選んで記事にしていきたいと考えています.私は,ジェンダーに関する問題は,日本における最も深刻な問題のひとつだと思っています.

     屈折や冒涜に倚って懸って芸と呼んで
     恰好善いお召し物にポーズ執って演じりゃ良い

     不幸自慢(Fuck off “g” men)

     いいたい,まあいいたい
     あたしは全然関係ない


            「不幸自慢」より抜粋  (詞:椎名林檎)

     そんなの関係ねぇ!!  

            競泳パンツ姿の小島よしおの芸より抜粋

   

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閃光少女

「閃光少女・解釈編」へ...


東京事変の新曲「閃光少女」ついに出ましたね.しかしCDではなくプロモーションビデオ(PV)のみ.これはこの作品が映像とセットでなくてはならないという意味でしょうか.

このPV,一部動画サイトで流れていたので,少しだけ知っていたのですが,いやー,改めてじっくり見ると感動します.しかし,今日ばかりは論理的にどうすごいなどと説明する気力は起こりません.正直ですね,言い過ぎだといわれてもかまわないので言いますけど,閑散とした夕方のルーブル美術館で巨大な宗教画を見上げて言葉を失った時以来の衝撃ですね.笑 理屈じゃなくて,圧倒されているわけですよ.しかし,芸術として数百年の時間を乗り越えて,なぜか分からないけどその価値が落ちない絵画というものがあるとして,それは偶然に人をだまし続けている絵だとは思えないわけです.やはり,描いた人間の苦悩や思想や,そういうものが絵の中の情景に刻み込まれているわけで,それを言語ではない何らかの方法で脳が感じ取っている,そう解釈するしかないでしょう.だから感動できるのだと.今回もきっとそうかと.

しかし私は「閃光少女」を解釈したい.言葉にならない状態から,言葉になる状態にしたい.うーん,どれくらいの時間がかかるだろうか...しかし,椎名林檎さんの詞は時に極めて広範囲に渡る「解釈の多重性」を許容するため,それをひとつひとつ紐解いていくことは簡単なことではないでしょう.すでにブログやレビューサイトでその兆候を見受けられます.「青春って感じがする」「元気が出ました」「悲しくなりました」...すでに見解はばらけてます.しかし大方全体に共通しているのは「なぜだかわからないけど涙が出そうになる」という感想.これが多いですね.いったいなぜでしょう.ここ,ポイントだと思います.

最後に私の現時点での印象を.

「閃光少女」はとてつもなく悲しい曲です.PVの映像からも歌詞からも,とてつもなく悲しいオーラが出ています.ひとつは現在の日本についての悲しみです.より良くしよう,よい生き方をしよう,というような,コンセプトのある前向きな努力はこの国ではすべて無視されているというメッセージです.そしてそれに関係のあることですが,やはり強いジェンダーに対する感情を感じます.世界に類をみない性差別大国の日本の現状,今一度皆が考え直さなければなりません.最後に,ジャケットをよく見てみてください.先行シングルとアルバムでは,ジャケットに描かれているテレビに映像が映っていますが,今回は何も映らず,砂嵐になってしまいました.アルバム「娯楽」に続いて「spa & treatment」ツアーでファンを和ませてくれた直後だけに,このジャケットはとてつもなく怖いんですけど...もう楽しい時間は終わったよ,と告げられているようで...そして中身はこの「閃光少女」ですから.

関連記事:閃光少女・解釈編

   

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贅沢は味方 by 東京事変

残念ながら,日本では子供が明らかに大切にされていません.とても軽視されている傾向にあると思います.

日本では,子供は子供らしく,という社会的強制力があります.そのひとつが,子供用のアイテムを喜ばなければならないという強制.日本では子供向けと大人向けのアイテムは完全に区別されています.分かりやすい例としては,アニメのキャラクターや可愛い絵がのっていて,素材は極めて安っぽいものが子供用です.服や文房具,手提げバッグからお子様ランチのお皿まで,いたるところにその「差別」ともとれる残酷な現状が存在します.えっ?子供にはまだ早いって?子供にはまだ分からないだろうって?私はそうは思いません.むしろ,そういうこと言うあなたが何もわかってないのでは,と疑ってしまいます.もしいいものを分かっていて,陳腐なものの貧しさが分かっていたら,愛する子供にそんなの与えたりしない,そうではないですか?そしてこれだけは言いたいのですが,子供はアニメのキャラクターや安い素材のものを好むように遺伝子に記憶されているのでは決してありません.明らかに,親,先生,日本社会の集団意識のようなものからそれを学び,本能的に「適応」しているだけなのです.

ドイツやフランスには,たとえば普通に子供向けの万年筆が売ってます.しかもとても持ちやすく,いい素材のものが.もし日本でそういうものを子供にプレゼントしようと思っても,見つけるのは至難の業です.そしてたいていは見つかりません.日本ではお金があっても意味がないのです.それから日本人はもうひとつの勘違いをします.贅沢はいかんだろう!と.いいえ.私は贅沢はいいものだと思います.いいものを知らないということは,「何でもいい」とか「どれも同じ」とかいう感覚を育み,100円ショップで適当に安いものを買ってきて,1週間で失くしてまた新しいものを買うという最悪の状況を生みます.これすなわち,よくないものを大量に作り,大量に売り,大量にゴミにしていくという,まさに今の日本です.商品から個性が薄れ,平均的に似たものを買わされ,飽きて,捨てて,買い換える.この繰り返しです.だからもし「いいもの」を使うことを「贅沢」と定義するなら,贅沢はしなくてはならないのです.いいものは確かに高価ですが,飽きず長く使え,愛着も湧きます.だからお金の無駄遣いには結果的になりません.そして何より精神的に豊かになれる.大人もそうですが,私は特に子供だからこそ「いいもの」を知る機会があるべきです.最も感受性が豊かな子供の時代にこそ!

   贅沢は見方
   もっと欲しがります,負けたって
   勝ったってこの感度は揺るがないの
   貧しさこそが敵

   贅沢するにはきっと財布だけじゃ足りないね
   だって麗しいのはざらにないの
   洗脳(わな)にご注意


      「キラーチューン」より抜粋 
      (詞:椎名林檎)

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茎-STEM-(2)

日本を改革することは簡単なことではありません.それはたとえば政治の世界に目を向ければ誰もが感じていることでしょう.「どうせ何も変わらないよ」というやつです.日本を導く優秀な指導者は,おそらく他の国では最も重要な政策論議以上に,もっと広く多才を求められるに違いありません.今生じている流れに逆らう場合,多くの抵抗勢力やマスメディアによって巧妙に排除されていくシステムが働くからです.そういった勢力を,ある意味,だます,煙に巻く才能が必要で,それはおそらく「言葉による論議」では解決しません.ほとんどの日本人は言葉による意思交換が苦手ですから.だからといって煙に巻く才能だけでは日本を混乱に招くのみです.つまり政策も優れていて先見の明があり,でもそれを煙に巻きながらさらりと実行できる方向に持っていけること.ああ,こんなのありでしょうか?危険すぎます.民主主義とはいいがたいものです,国民が蚊帳の外なんて.平和の国日本だけに,性善説を信じるしかないでしょうか.

さて,そういった政治の世界はさておき,自分が自分らしく生きたいと思うくらいは簡単でしょうか?いえ残念ながらこれまた簡単ではないです.日本においてもし自分(個性 or アイデンティティー)を保とうと思うなら,同様に多くの才能が必要でしょう.しなやかに,かしこく,堅実に,そして急がず.簡単には傷つかず,どんなときも喜びすぎず.艶やかに咲く花ではなく,太陽を浴びて呼吸する葉でもない.立ったら二度と倒れない「茎」であること.

     今日からは生えても芽吹いてもクレマチス
     咲いても悦び過ぎないから
     大事な命壱ツだけどうか持っていかれませぬ様に
     哭いたり惑ったり致しませぬ 立ったら弐度と倒れないから
     何も要らない壱ツだけだうか誰か嗚呼
     エントリーナンバーワン

                      「茎」より
                      (詩:椎名林檎)


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茎-STEM-(1)

風力発電の羽根を間近でみたことがある方はお分かりになるでしょうか.近くに行くと,羽根がすさまじい風きり音を放ちながら,すさまじい速度でまわっていきます.モーターの不気味な地鳴りのような音とともに.

この羽根をひとりの人間の手で止めることなどできるはずがありません.そして私にとって日本を改革するのはこういうイメージです.

この国の現在のシステムは決して止まることの無い風力発電の羽根のように,すさまじい運動エネルギーを伴っているように感じます.似た価値観を持つ人間,和を乱さず人と同調することでお互い安心感を得る気質,形式を重んじ,本質的な部分はあまり追求しない姿勢,これらが結集することでとても強力なパワーが生まれるのでしょうか.

さて,この巨大な運動エネルギーはまた,抗う者を排除する絶対的な力をも持っています.新しい風を起こそうとする者には,出る釘としての手痛い洗礼が待ち受けているものです.まあ,そもそも戦力喪失でしょうか.ですから,もしこの現状を本気で憂えば憂うほど,なす術ない哀しさが膨らむばかりです.最も楽なことは,すべてを受け入れ,その中に安住すること.そして人はそれを選択して,この巨大なエネルギーをさらに強大なものにしていってしまうのです.


     此の扉なら破れない
     其の塔なら崩れない
     彼の天なら潰れない
     何れも嘘らしく馨っています
     
     喩え蒔いても育つてもクレマチス
     咲いても強く色付かうとも
     瞬時に黙つて堕ちて逝きます
     如何して なぜ哀しくなったの
     現実の夢

             「茎」より
             (詩:椎名林檎)



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母国情緒

日本人はたぶん世界で最も自己主張しない国民でしょう.
自分の意見というものを滅多に述べません.
たぶんそれは,大方自分の意見がそもそもないからでしょう.
これは遺伝学的問題か.環境因子のせいなのか.
はたまた他の原因か...

島国故に,他民族の流入が少なかったのも理由のひとつかもしれません.
みんながたいてい同じ考え方だったとしたら,
わざわざ意見を言って相手を振り向かせることは必要ないわけです.

しかし今日,世界中の情報は瞬時に手に入るようになりました.
情報が洪水のように押し寄せ,
昔では考えられない速度で,自分の知りえなかった新しい知識が蓄えられていきます.
その知識は自分のものごとに対する考え方・概念を常に変化させ,
おそらく一般に思うよりもはるかに日本人は個々が同じじゃなくなっているはずです.

しかし.
それを他人に伝えるすべを未だに持たないのが日本人です.
それは本来簡単なこと.
それは言葉を発して相手に伝え,
相手が発した言葉を個人的偏重なく(客観的に)解釈すること.
それだけなのに,言葉をかわすことは日本人にとってこんなにも難しいのでしょうか.


    春夏秋冬雲の色まであなたとお揃いで
    何一つ欲しいものがないの
    もしも望みが叶うとしたら言葉を交わしたい
    母国だって同じだもの
    母国情緒此方に在りらむ

                  「母国情緒」より
                  (詞:椎名林檎)

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