日本について考えるブログ




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聲の形 :: 2016/10/03(Mon)

映画「聲の形」を見ました。なかなか見応えのある映画でした。

この作品は決して「いじめ」や「障碍者」をテーマとした作品ではないと思います。意図した善悪や優劣の明示がありません。もちろん見る側は、世間の常識に従って勝手に善悪や優劣を決めて作品を見てしまうでしょう。ですが作品自体はそんな常識を当たり前のこととしては描いていません。ですから、いじめの被害者や障碍者を擁護したり、正しい者は最後は救われる的な演出も一切出てきません。いやむしろ、登場人物皆が様々な障害(欠点)を持っているように描かれているとさえ思います。

つまり、作者や演出家は、登場する人物すべてに平等であることを強く意識して作品を作っていると感じます。そこに強く心打たれました。過剰な演出やストーリーの妙によって涙を誘う事はなく、ひたすらにまっすぐに人物を描いて感動を誘ってきます。このようなタイプの作品は、大衆的な日本の映画作品、特に感動を誘う系の作品の中にあっては希有です。

見る側は、この映画に何かを期待したり、答えを求めても肩すかしを食らうでしょう。一方この作品は、どうしたら異なる価値観や能力をもった人間が互いに理解しあい、共に「楽しく」生きて行くことができるのか、そんな普段は考えない面倒なことを考えるきっかけを与えてくれると思います。

私は未読ですが、原作の漫画はもっと濃いらしく、映画では割愛されたシーンやストーリーがあるようで、映画化に不満を持っておられる方もいるようです。おそらくこの尺で表現するため、最も大事な作品の色だけは崩れないように、苦労して再構築した結果なのだと推測します。監督さんをはじめクリエータの方々に敬意を表したい。素晴らしい作品と出会えたことに感謝です。原作も読んでみたいと思います。

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ちょんまげぷりん :: 2010/10/11(Mon)

人生はケーキほど甘くない?


「人と人とのつながりに,年や身分などは関係なきことにござるぞ」

侍と言えば”主君に絶対服従”,でもそれはむやみに自分の良心を売り渡すということではない.自立した個人として存在することを大切にし,他人に対しても年齢や身分を判断基準にはしない.現代へやってきた安兵衛は,さらに男女の別からも自由になる柔軟性を持っていた.(公式サイト,「安兵衛語録」より)

****

驚いた.何の予備知識もなく飛行機の機内でこの映画を見たのだが,普段から僕が感じていることが詰まった映画だった.特に,子供に対して全く「子供扱い」せず,一人の人間として真摯に接する主人公の姿がとても美しい.正直ラストシーンよりも,このような何気ない前半で涙が出そうになった.

基本的には娯楽映画で,笑いどころもたくさんあって,肩肘張って見るような作品ではない.それでも,作品の中に内包されている主張はとても重たいものがある.子育てや仕事や結婚生活や,そのほか現代日本に特有の問題で暗い毎日を送っている方は,この映画から元気をもらえるかもしれない.いろんな要素のバランスがとてもいい.

このブログではたくさん武士(士族)の悪口を言っている.笑 しかしこの映画では,武士の美しき哲学がこれでもかと現代社会に提示されていて,とても痛快だ.そこにはしっかりと芯があり,主張があり,正義や,そして愛さえも感じる.守りたいものがしっかりと存在する.日本人が忘れかけている美しい価値観に出会える映画だ.誇張ではなく,ここ近年ではベストの邦画だと思う.

まだ見ていない方,興味ある方は是非とも劇場へ!!まだ間に合います.

http://www.c-purin.jp/
(公式サイト中の「安兵衛語録」は必読です.(トップの作品情報 → The sayings))

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アバター :: 2010/02/11(Thu)

話題のジェームズ・キャメロン監督最新作「アバター」の感想(3Dは吹き替えだったので,2Dで字幕版の感想です).

どうも最近「アバター」が非常に気になっていた.理由はいくつかある.まず,世界最高の興行収入を記録した映画がいかほどのものか,という漠然とした興味.また,今回は宇宙人が善で人間が徹底的に悪役らしいということで,いったいどんなストーリーなんだろうか,そしてどう解決するのだろうか,という興味.そして最後に,遠い異世界の惑星(実際は僕の勘違いで衛星でした)の景色・生き物の姿が最先端のCGでどのように描かれているのだろうか,という興味.だいたいこの三つだ.基本的に僕はSF・CGという言葉に弱い.なんだかわくわくしてしまい,どんな映像なのか見たくなってしまう.

感想を正直に書くと,ちょっと残念だった.残念の意味は,ストーリーも映像も,期待していたものとは違った,という意味でだ.ストーリーに関してはそもそもあまり期待してなかったのだが,映像はけっこう美しくて刺激的かもしれないと思っていたのだが,そちらも少々期待はずれだった.今回は残念ながら2Dを鑑賞した.3Dだと受ける印象が違ったかどうか,それは分からない...


(注:ここから先は内容に関係することを書いています.)


この映画の舞台は,地球からはるか彼方のとある衛星「パンドラ」である.この星には鬱蒼と茂るジャングルがあり,その森の中で原始的な生活を送るナヴィ族が暮らしている.地球からこの星にやってきた(おそらく未来の)人間は,この森の地下に貴重で高価な地下資源が眠ることを知っており,それが欲しくてナヴィ族との間で小競り合いが続いていた.

そんな中,主人公のジェイクは人工的に作られたナヴィ族の体を借りて,森の中にナヴィ族に立ち退くよう交渉に向かう.しかし森の中で自然と調和した生活を送るナヴィ族の心に触れるうちに,ジェイクは地球人の行いこそが間違っていると悟り,それに賛同した科学者たち数人と共にナヴィ族側に味方する.つまり人間が人間を裏切る.あとは資源略奪を試みる地球人の暴走軍隊との間で例に漏れずドンパチ騒ぎをやる.戦争の結果,ナヴィ族が勝利し,地球軍は破れパンドラから追い出される.ジェイクはパンドラに残り,ナヴィ族として生きていくことになり,一応ハッピーエンドで終わる.

勧善懲悪の典型の映画だ.類似のハリウッドSF映画と同様で,新しさは何も見つからなかった.これまではエイリアンと地球人の戦いなら当然エイリアンが敵だったが,今回はそれが逆になった,というだけである.戦争を避けるためにはどうすればいいのか,とかそういう場面があればもう少し雰囲気が違ったかもしれないが,アメリカには悪は悪であるという思想が根強い.オバマさんも言っていたように,「Evil does exist」なのだ(こちらの記事).

悪(悪魔に魅入られた人間)には言葉や交渉は通用しないから,戦って打ち負かすしかない,という前提がやはり根底にあり,戦争でどんぱちやるのが恒例になる.このどんぱちシーンで,美しいパンドラの森がむちゃくちゃに壊れていく様があまりに克明に描かれすぎていてさすがに胸が痛くなる.エンターテイメントと割り切れば全く問題ないんだが,この映画には完全にそう割り切って楽しめない陰鬱とした雰囲気がある.どこか中途半端だと感じる.

ところで,この手のハリウッド映画に登場する悪役は悪役としては完全無欠だといつも思う.今回もそうだ.地球軍の大佐(悪の大ボス)はかっこよすぎる.最後まで見事に心を悪魔に授けた大佐の首尾一貫性は美しくもある.笑 日本が産んだ悪の英雄,越後屋も悪代官も真っ青である.ある意味,見所はここだと思う.

あと,今回の映画のストーリーに関しては,ナヴィ族がネイティブアメリカンに見えるという感想があるようだが,僕もそれは感じた.確かにいろいろと似ている.しかし,それならほとんどダンス・ウィズ・ウルブズの焼き直しである.場所を地球外の遠い場所に移しただけで...そういう意味でもあまり新しさを感じない.


次に映像に関して...こっちは少し期待していた.生き物好き冒険好きの自分は,こういう設定は大好き.でもちょっと期待が大きすぎたようだった.汗 いくつかピックアップしたい.

まずナヴィ族のしっぽがどうも軽視されている(この感想は多分僕だけ...).とても立派なしっぽをナヴィ族は持っているが,しっぽの美しさ・喜びが感じられない.しっぽはもっと生き生きと活躍して,別の生き物のように振舞わなくては.そんな映像があるだけで,ナヴィ族はもっと生き生きとしたのではと思う.肌の質感とか,そういう映像自体はとてもリアルなのだが,どこか生き生きと感じない...僕的にはロード・オブ・ザ・リングのゴラムの圧勝だ.

パンドラに住む凶暴な野生動物や植物の姿もいまいちだった.特に奇想天外な生き物は登場しなかった.どちらかというと凶暴ぶりばかりが強調されすぎていて,もっと異世界感をかもし出すようなき奇怪な生物がいてもよかったのにと思う.植物にしても同じ.やたらと発光植物が多かったが,姿かたちは地球のものと変わらない.というか充分に想像の範囲である.ただ巨大なだけ,というふうに思えた.しかし,未知の生き物をゼロから描き出すことがどれほど難しいことか,僕は想像できない.おそらく本当に大変な作業なのだろう.ただのイラストならまだいいが,動きもあるのだし.

とても美しいと思った映像もあった.それはパンドラの空に昇る惑星である.舞台の星パンドラは衛星.巨大な惑星の周りを回っている衛星だ.夜になるとこの巨大な惑星がパンドラの空を覆うほどの迫力で空に現れる.他にもう一個小さな衛星が見えていた.この月明かりならぬ惑星明かりがパンドラの夜を照らす.そして地上には無数の発光植物...この風景は明らかに地球のものではない.けっこう感動した.天体運動は物理現象なので,生物より描きやすく,説得力が生まれやすいのかもしれない.


ところで,この映画がなぜこんなに売れているのだろうか..

http://movies.foxjapan.com/avatar/

実は本編を見た後,自宅でアバターのHPにあるこの予告編を見た.そして,,,,また少しだけ見たくなった.笑 ずいぶんとよくできた予告編なのだと思う.もちろん,3Dという新しい試みも好奇心旺盛な人々の心をつかんだのだろう.ただ3Dは目が疲れたという人も多いようで,賛否が分かれているようである.

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さくらん :: 2008/10/02(Thu)

やっと,映画「さくらん」を見ました.ずっと見たかったんです.「さくらん」は安野モヨコ原作の漫画.江戸・吉原の玉菊屋に売られた8歳の少女,きよ葉が,花魁となるまでの苦悩と葛藤を描いた作品.


(以下,内容に関する記述があります.)


  惚れるも地獄
  惚れられるも地獄
  色が無ければ生きてもいけぬ

このきよ葉の言葉に共感を持てるとすれば,まあ女性だけかもしれませんね.男性は主体的に,実体験的にこの言葉の意味を感じ入ることは難しいだろうなぁ,と男性の私は強く思いました.汗 

きよ葉は,自由と自立を求めて,何度も吉原を脱走しようとしますが,捕まり,火責め・水攻めの折檻.時がたちやがて一人前の遊女として成長していくも,本気で惚れた男には裏切られ(本気で惚れてはいけない),本気で自分に惚れた男性を裏切り(断ってはいけない身受けを拒絶し),それでも,色がなければ生きることができない,と言う...

いいこことが何もない.

これは非常に単純なこと.吉原のルールを承認し,順応することができれば,それは一切の自由を失うことになるが,一方で何かしの幸福の形が生まれはする.花魁とはそれだけ魅力ある大きな存在.男性を何度も通わせ,手玉にとることもできるし,名声も手に入る.しかし一方,それに反抗すれば,苦悩と地獄以外の何ものも待ち受けていない.

これは,江戸・吉原を精密に描いた史実作品,という性格ではないと思います.むしろ,これと同じ状況は形を変えて今もあるんだ,というメッセージを私は感じました.「ああ,江戸吉原で生きていくのは大変だったんだねぇ...」なんてことで片付けられないものを感じるわけです.女性にとって,決められた社会構造に従えばある程度楽に生きられるかもしれないけど,あえて本当に自由の道を進めば,そこには苦悩しかない.で実は折檻だってある.それはメディアや親や夫らによって,暴力はなくても,自然に存在しうるでしょう.

やっぱり,女性にとって,いい世の中であるとは決して言いがたい現代日本です.

たぶん,この映画を見て元気を貰えるとすればラストシーン.ちょっと演出はいまいちで打算的な気もしましたが,きよ葉が,清次とかけおちをし,桜を見に行くシーンは,ある種の希望です.原作はこうではないのですが,ここはあえて,このようにしたのですね.監督さんの気持ちが少しだけ分かる気もします.(勝手に思っているだけでしょうけど...笑)

ところで,この映画は作品の性質上,一般に男性が見てもピンと来ないのでしょう.アマゾンのレビューやいくつかブログにもお邪魔しましたが,おおむね男性(と思われる人)は,「よう分からん.」と言っております.苦笑 そしてミスキャストだとか,演技が上手くないとか,話題は別の場所に飛んでしまっています.いい映画だった,色が美しかった,という感想はやっぱり女性が多いようです.ちなみにこの映画,ベルリン映画際で招待作品として上映されましたが,評判はやや微妙だったとか.まあ,ここで描かれている世界は決してユニバーサルではないですから...^^;


  帰る場所など何処にありましょう
  動じすぎた
  もう疲れた
  愛すべき人は何処に居ましょう
  都合のいい答えは知っているけど
      

「さくらん」の音楽を担当された椎名林檎さんの詩は,映画の世界観とすごく調和しているにも関わらず,必ずしもこの映画のために書いた曲ではないんですよね.この「ギャンブル」という曲もそうです.


 

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ハウルの動く城 :: 2008/09/25(Thu)

風の谷のナウシカや天空の城ラピュタに魅了された友人,私の世代にはけっこういます.それに比べると,自分はそこまでジブリ作品に惹かれた口ではありません.でも,ファンタジーとしては本当に面白いし,絵も素晴らしく美しいので,見ているとどんどん引き込まれていくんですよね.

前に飛行機の中の音楽番組でハウルの動く城の主題歌「世界の約束」を聞いて以来,どうしてももう一度映画のほうも見たくなり,とうとうレンタルして見てしまいました.^^ 映画館以来,二回目のハウルの動く城です.実は,ハウルの動く城は私が最も心揺さぶられた宮崎作品だろうと思っています.ナウシカよりもラピュタよりもトトロよりも.ただ,なぜそんなに魅かれたのか?という点は全く自己分析してなかったんで,改めて考えてみました.

(※映画の内容に関わることを以下には書いています.)

この映画はけっこう難解です.何が難解かというと,場面設定や背景などの説明がほとんどないという点です.例えば,なぜ戦争が起こっているのか,とか,カブにはどのような呪いがかかっていたのか,とか,結局ソフィーの魔法は解けたのか,とか...探し出せばきりがありません.そういう因果関係や物語の背景などは,概ね明快には分からないようになっています.たぶん,意図的にだと感じます.

で,考えました.この不透明性は自分の社会に対する世界観に似ているんだろうなぁ,と.この世界は単純ではない.何事にも原因と結果のようなものはあると思うのですが,それは1対1の対応ではなく,たくさんの原因とたくさんの結果が複雑に絡み合っていると思うんです.だから,単純な形で理解することはできません.

例えば,イラク戦争がなぜ起こったのかを,本当のところ私は知りません.アルカイダのせいなのか,ブッシュさんのせいなのか,お金のせいなのか,宗教が起こす一種の必然なのか.全部関係しているようで,でもどれが絶対的要因かなんて分からない.それを無視して,「○○のせいで,戦争が起きました.」なんて単純化するのはむしろ虚偽.ハウルの動く城の中の戦争は,そういう感覚に近いと感じました.生活者から見た戦争.でも確実に起きている戦争.

魔法もそう.魔法は何しろ「魔法」ですからね.ソフィーにかけられた魔法に関して,それはどんな種類だとか,どういう意味だとか,解けたのか解けてないのか,とかいう話は実際は意味を成さないでしょう.分かりようがない.そういうふうに描かれている気がします.

そんな混沌とした世界の中で輝くのが,ちゃんと自分の考えを持ち,他者への思いやりをもち,身分や性別など関係なく,言いたいことはきちんと発言しながら生きていく,そんな登場人物たちの姿!! ここに心惹かれたのかもなぁ,と自己分析しています.ソフィーの妹の「自分のことは自分で決めなきゃだめよ.」という言葉がすごく印象に残りました.

まあ,この映画に魅かれる理由が,それこそ,これだけなわけはないのですが...笑 やっぱりハウルの魅力かもしれませんね.男性から見ても彼は本当に素敵ですよ.

ところで,ハウルの動く城といえば,世界の約束も素晴らしい曲ですが,映画の中では始終流れる「人生のメリーゴーランド」も素晴らしいですね.(タイトルがちょっとくどいですが...汗) 映画の冒頭に,ピアノだけでゆっくりとこの曲が始まるシーンで,はやくもじーんときます.なんで感動してしまうんだろうか.You tubeにあったので,リンクを埋めました.

関連日記:世界の約束が頭から離れない...^^;





 

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崖の上のポニョ :: 2008/08/17(Sun)

崖の上のポニョ,見ました.
感想や思ったことなどを残します.

注:今後映画館に行こうと思われている方は読まないでくださいませ.以下には映画の内容に関わることを書いておりますので...



思ったことをまずはダラダラ書きます.


********

映画を見るまでは何とも感じなかったけど,実際映画の中で動くポニョは本当にかわいい.ポニョのしぐさや表情,命が吹き込まれてると思いました.

最初の海中の映像から始まり,オープニング曲とともにデフォルメされた海と陸の絵が流れるシーンまでの流れは圧倒されました.美しい!!「ポーニョポーニョ♪」の歌からはおよそ想像していなかった壮大なオープニングシーンです.

宗介はなかなか立派な少年です.彼はまだ5歳ですが,自分で考え,判断して行動する.ただ,宮崎映画に登場する男の子の特徴である,「優等生ぶり」が今回もずいぶんと際立ちます.もうちょっと欠点なんかあれば人間味が増して深みがでると思うのですが.

宗介の母であるリサも素敵な大人です.宗介をひとりの自立した人間として見ていて,そして深い愛がある.親子が名前で呼び合っているのもいい.宗介は,デイケアセンターのお婆さんたちに対しても苗字じゃなく名前で呼んでいますね.

この作品の中には,どんな些細な悪意さえ登場しないように思います.悪意はこの浮世にはつきものなので,この作品の中は完全なユートピアで,現実世界ではないですね.それを見せているのだと思う.この映画を子供に見て欲しい映画だと言うのなら,なるほどそうかもしれません.でも大人も充分に楽しめました.

この映画はCGを一切使っていないそうですが,そのおかげもあってエンディングロールがとても短いです.例の「ポーニョ,ポーニョ,ポニョ魚の子...♪」の歌が流れてそれで終わり.ものの数分.早くてとても気持ちいいです.最近の映画は,大作ぶりをアピールするかのように,延々とエンディングロールを流す映画が多いですが,あれは少々気持ちが萎えます.まあ仕方ないケースも多いのだろうけど.

********



とまあ,こんな感じなのですが,これはあくまで,この映画を単なるファンタジーとして捉えた場合です.実は,もうちょっと細かく見ていくと,気になることがたくさんありました.いや,そここそが今回とてもひっかかったポイントです.ここからは,いつもどおりごちゃごちゃ書きますが,暇でしたらお付き合いください.汗 ちなみに私は宮崎アニメはけっこう好きです.ただ,だからと言っていつも「いい映画だったなぁ」とはならないんですよね.思ったことは正直に書きます.

まず,宮崎駿氏は,この映画に関して,単なるファンタジーという位置づけではありません.氏はこの映画に対して,

「少年と少女、愛と責任、海と生命、これ等初源に属するものをためらわずに描いて、神経症と不安の時代に立ち向かおうというものである」

と述べられています.このフレーズはこの映画のテーマであると感じます.明らかに現代社会に対して具体的メッセージを伴っており,実際そのように感じます.しかし,私はそのような視点で見たときに,あまりに自分の感覚とはこの映画は異なるなぁと感じました.

少年と少女とは,この映画では,宗介とポニョでしょう.宗介は,知的で落ち着きのある責任感のある少年として描かれていますが,ポニョはどうでしょう.可愛らしく,思慮深くなく,感情的に突っ走る存在として描かれています.このふたりを「少年と少女」として代表させるのは非常に問題を感じます.

この部分は,宮崎氏のこの映画に対する説明にある,

「海に棲むさかなの子ポニョが、人間の宗介と一緒に生きたいと我儘をつらぬき通す物語」

という言葉にも表れています.つまり「わがまま」という言葉.なぜこんな壮大なテーマの中に「わがままをつらぬき通す」が登場するのでしょうか.どのような意味が込められているのでしょう...

それから「愛と責任」.もちろん「愛」も「責任」もこの映画のいろんな場面で出てきますが,肝心な宗介とポニョの間にどんな愛と責任があったんだろうか,と思うと非常に疑問です.一番残念なのは,なぜポニョは宗介を好きになって,なぜ宗介はポニョのことを守ろうと思うようになったのかが,私には推測さえできないということです.この部分を無視しながら,愛も責任も実現するのでしょうか.私の感覚では,これは「愛と責任」じゃなく「ひと目惚れと約束」ですね.責任は果たされているかどうか分かりません.むしろ物語の描く範囲内では無責任だとさえ感じます.私は,ポニョがこの先,人間になったことで幸せな一生を送れたかどうか,不安でなりません.しかし,そこに多くの人は興味を持っていないようで,恐いです.

という具合に,私が心配してしまうのは,常にポニョのことなんですが,別にポニョの可愛さにやられたからじゃあないですよ.笑 これは,ポニョの描き方がそうなっているからだと思います.つまり,ポニョはとても可愛らしく,おちゃめで自由奔放に描かれている一方で,知性とか意志とか責任とかが全く与えられていないんですよ.これじゃあ,私は不安です.そんなポニョを人間にしようと取り決めている周囲の人たちは,ポニョが不幸になったらどう責任を取るんだろうと思いますね.自己責任だとでも言うつもりでしょうか.

ということで,宮崎監督は「不安に立ち向かう」と言われていますが,私はむしろ不安になりました.涙 ただのファンタジーならすごくいい映画だと自信を持って言えますが,社会に対するメッセージ性を絡めるなら,私はこの映画は非常に問題だと感じます.人魚姫が題材ですから,多少は仕方ないのかもしれませんが,もう少し,現代的解釈を付加して欲しかった.

 

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ホミサイド :: 2008/01/29(Tue)

   殺しか?さあ出動だ.
   一癖も二癖もある有能なデカがボルチモアには揃っている.
     (中略)
   ホミサイド.殺人捜査課.
   捜査に銃はいらない.
   勘と経験を頼りに物的証拠を挙げ,
   犯人に気持ちよく自白してもらう.
   それが俺たちデカの仕事だ.
   私たちは推理ドラマや派手なアクションドラマなんて信じない.
   信じるのは生身の人間の心理ドラマだ.

このナレーションで始まる「ホミサイド」.これは1993-1998年までの間,アメリカNBCが放送した刑事ドラマです(ホミサイドとは,アメリカの警察における「殺人捜査課」のこと). このドラマ,実際に銃を使う派手なシーンなどほとんど皆無です.登場する犯人も,計画的な知能犯はほとんどいなくて,日本にありがちな推理小説的要素は全くありません.捜査をする刑事たちの日常は「犯人を追い詰めていく」のではなく「犯人を探し出す」というもの.犯人に対する過剰な恩情もなければ軽蔑も何もありません.また,刑事も人間であり,時に失敗します.プライベートの悩みを仕事に引きずったりします.そして,それがとんでもない結果を招いたりすることもあります.水戸黄門的安心感はありません.しかしそれだけに,真っ直ぐに人間と向き合うとても温かな人間ドラマであって,むしろとても素晴らしい刑事たちの姿が描かれています.同僚たちは常にコミュニケーションをとりながら(時に喧嘩もしながら)真に心を通わせ,事件解決に向けて努力を続けます.事件は一話ごとに完結するのではなく,いくつもの事件が同時並行的に発生し,話にまたがりながら進んでいきます.そしてある時突然解決したりましますが,未解決のまま残るものもあります.極めてリアルです.

私はこのドラマの全シリーズを見たわけではないのですが,とにかく最初に見たときの衝撃は今でも忘れられません.アメリカのテレビドラマの質は日本とは根底から違うんだな,と思いました.日本人の多くは,アメリカは銃社会だと思っており,残念なことに危険な国だと認識していそうですが,そういう方は是非このドラマを見ることをお勧めします.こんな刑事たちがいるのなら,日本よりはずっと安心なんじゃないのか,と思うはずです.そしてこのようなドラマをお茶の間で見ることができる幸せというのは本当に素晴らしいことです.

いいものというのは,文化の違いなんかで感じ方が変わってしまうような浅いものではありません.ホミサイドはアメリカで製作されたドラマですが,東洋人である私の心にとても深い感慨を与えてくれます.日本のテレビドラマや映画からは,残念ながらあまり感銘を受けるものは出てきませんが,一方,ホミサイドともし肩を並べることができそうなものが日本にあるとすれば,それは漫画でしょう.日本の漫画やアニメーションは多く輸出されて,欧米やアジア圏など多くの国で受け入れられる傾向があります.同じ日本人が描いているのに,不思議ですね.なぜ日本の漫画には社会や文化の違いを乗り越えられる作品がちゃんと存在するのか,という疑問について私はずっと考えてきました.これには持論がありますので,そのうち記事にしたいと思います.

ということで,ホミサイド.放送権買って,どこかの民放あたりで放送してくれないかなぁ...もう一度見たいです.レンタルショップにはなさそうだし...

ところで,毎年思うのですが,正月の深夜にすごくいい映画をよく放送しているじゃないですか.あれ,日中の番組どれかひとつと交代できないのかな,と思います.こっちは正月で酒を飲みすぎているので健康のために早く寝たいんです.なぜに「いいもの」が深夜に回されてしまうんでしょうね.納得がいきません...とまあこんなわけで,テレビ局の皆さんにお願いです.週に1度でいいので,「いいもの」をゴールデンタイムに放送してください!「いいもの」とは,文化の違いを超えられる内容を伴った番組です.別に芸術性が云々と言っているわけではありません.できれば,各放送局談合して,月曜夜8時から1時間は「いいものしか放送しない」というのがいいですね.笑

またまた最後は脱線してしまいました.(^_^;) 

   

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12人の優しい日本人 :: 2008/01/05(Sat)

「十二人の怒れる男」(1957年アメリカ)をもとに着想し,三谷幸喜さんがもともと戯曲として書き下ろした作品.喜劇.1991年に映画化されています.このようなブログを管理している私としては,前々から気になっていた作品ではあるのですが,なんと正月の深夜番組でこの映画が放映されるということを知り,幸運にも見ることができました.

この映画,特にストーリーと呼べるものはありません.もし日本に陪審員制度があったら,という仮定のもとに,ある殺人事件の陪審員に指名されたお互い見ず知らずのどこにでもいそうな12人の日本人が,密室において延々と議論を交わし,最終的に「被疑者は無罪」という結論に達する過程を描いた物語です.

この作品,「十二人の怒れる男」のパロディだとよく言われていますが,形式上は確かにそうであっても,中身は全く違っています.「十二人の怒れる男」では,ほとんど有罪としか思えない少年に対して,一人の陪審員が「有罪とは思えない」と異議を唱え,すべての証拠の不合理性を指摘し弁証を繰り返すうちに,次第に陪審員全員が「無罪」の方向へ向かっていきます.しかし,「12人の優しい日本人」では,有罪と無罪が議論の最中に二転三転.全く一貫性がありません.笑 人の話に簡単に流される人,全く意見を言わない人,主張に全くの論理性がない人,人の話を全く聞けない人.自分という殻から出ようとせず,適当に話を切り上げようとさえします.しかし時間が流れ,少しずつ「意見」というものを発するようになり,人の話を聞こうとし始めたときから,例えその個別の主張に論理的根拠がなかったとしても,不思議と議論は全体として真っ当な方向へと向かいはじめます.

「十二人の怒れる男」はよく裁判における陪審員制度の重要性を説明するために引き合いに出されるようですが,「12人の優しい日本人」が描いているもの,それは司法とは全く関係なく,おそらく「日本人の本性」そのものでしょう.しかしながら,欧米人のような論理性・合理性・個人主義を身につけなくても,この作品に登場する12人は最終的にはとても美しく陪審員という仕事を全うするのです.不思議な爽快感があります.正直言うと,私にとってこの作品は「救い」の作品でした.笑 憎むべきものは日本人の気質ではきっとありません.何らかの意見を持ち,それを発し,そして他人の話を(敬意を持って)聞けるという,この3点を持つことができれば,現状のままの日本人気質であっても問題なく世の中良くなる気がします.そしてこの3点は,決して日本人的な気質と相容れないものではない,ということをこの作品は具体的に示してくれているように思えます.作品の性質上,世界から評価されるような普遍性はないかもしれませんが,非常に素晴らしい作品です.

   

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ダーウィンの悪夢 :: 2007/12/17(Mon)

かなり遅ればせながら,賛否両論の大論争を巻き起こしたドキュメンタリー映画「ダーウィンの悪夢(Darwin’s nightmare: 2004年フランス=オーストリア=ベルギー)」を見ました.

あらすじ:アフリカ中央に位置するヴィクトリア湖.その湖に今から半世紀ほど前,ささいな試みから新しい生き物が放たれました.このナイルパーチという魚は在来種をことごとく駆逐して増殖し,湖畔の町にナイルパーチの一大魚産業を誕生させました.それをヨーロッパや日本に売ることで外貨を得て,周辺地域の経済は潤います.しかし一方で貧富の差は拡大し,貧困,エイズ,ストリートチルドレン,ドラッグ,湖の環境悪化とまるで悪夢の連鎖が加速します.さらに驚くべきことに,ナイルパーチを積みにやってくる飛行機が往路でアフリカへ運んでくるものは,戦争に使われる兵器だったのです.

この作品,内容をそのまま鵜呑みにするなら,ヨーロッパ資本主義経済が,アフリカ経済を食い物にし,とどまることを知らない負の連鎖を生じさせていることを告発する映画といえるでしょう.しかし,問題はそう簡単ではないと感じずにはいられません.

問題1:この映画が,本当にビクトリア湖周辺の現状を「正しく」描いているとは思われていないようです.たとえば,こちらの記事をご覧ください.そもそもドキュメンタリー映画とは何だろうかと考えなくてはなりません.やはり映画監督の主観が強く入っており,いわゆる「ニュース」の類とは全く違います.ですから,作り手が表現したい世界を,取材した映像を好きな順番に並べて「作製していく」のですね.ですから,見る側としては,現実を知るために見るのではなく,この映画は何を描きたかったのかと思って見なくてはなりません.そうすると,どうも腑に落ちない.タイトルの「ダーウィンの悪夢」.ダーウィンといえば「進化論」.強い生物,環境に適応した生物が生き残り,他の生物は淘汰されるという進化の原理です.ヴィクトリア湖の魚はナイルパーチによって淘汰されます.現実の人間世界では,限られた資源を奪い合うとき,市場経済という大発明をした人間が勝ち残ってしまっていると言いたいのでしょうか?製作者に罪悪感があるなら,このタイトルはつかないと思います.まあ「悪夢」となっているので,当然のことながら好意的に描いているわけはないのですが,自然の摂理というような言葉で片付けられかねないわけです.どこか自己防衛的意味合いを感じずにはいられないのは,私だけでしょうか?

問題2:そして,実際にこの映画はヴェネチアを始め,世界中の映画祭で多くのグランプリを得ています.さて,その寸評はというと,非常に好意的なものが多くあります.はて,この映画は,先進国に住む人間に現状の理解と反省,今後どうすべきか考えさせるために作られた映画ではやっぱりないのですか?やはりビジネスなのでしょうか.もしくはビジネス50%,告発50%,かな...フィクションとは違うので,とても私は困惑してしまいます.

ところで,アフリカの貧困について知らぬ日本人はいないでしょう.日本のメディアでもよく取り上げられますし,募金・経済援助の話においてもよく登場します.しかし不思議でならないのは,なぜこうなったのか,そしてどうやって打開すべきなのか,という具体的論議を見聞きしたことは(日本においては)一度もありません.よその国の話なのでしょう.どう考えたって「植民地支配」は大きな原因のひとつですが,今さらそれについて言及する人もいません.やはりヨーロッパを敵に回せる人間なんてこの世にいないのでしょうかね.そして,多くの人は,この「ダーウィンの悪夢」のような捉え方をしているのでしょうか.「摂理」に近い感覚.私が知る限り,このような問題を理論的に解析し,どうしたら問題解決に近づくのかを真剣に考えている方は,ごく少数です.これはまた別に記事にしたいと思います.そしてそれこそがとても重要なことだと思うのですが...

関連記事:お金について

   

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