日本人は利己的か

私はこのブログで,最近「日本人は利己的だ」ということを繰り返して書いてしまっていますが,まとまった説明の記事を書いていませんでした.根拠のない日本人批判(非難)のように感じられた方もおられたかもしれません.ということで「私が感じる日本人の利己性」について,ここでちょっとまとめたいと思います.

「利己主義」の定義
まずは意味を確認します.利己主義とは,自分の利益のことを優先し,他者の利益を無視もしくは軽視する考え方です.自分の利益を細かく計算できていない場合の利己的な行動は,「わがまま」「身勝手」のようなニュアンスのほうが近く感じられます.この記事では,個人に対してだけでなく,集団についても利己的という言葉を使いたいと思います.つまりその集団にとっての利益を最優先にするような場合,それは利己的な集団です.

「利己主義」「利他主義」そして「功利主義」
利己主義の反対は字面で考えれば「利他主義」だと思いますが,「利他」はかなり特殊な状況です.自己の利益は無視し他人の利益のみを考えた行動というのは,存在しないとは言いませんが,一般的ではありません.じゃあ,人間の行動を利己か利他に分類するのなら,誰でも利己的な行動をとるんでしょ?という結論になりそうですが,実はそうではありません.自分の利益のみを追求するのではなく,自分の利益にもなり,かつ他人の利益にもなるような行動をとる人がいます.これが「功利主義」です.シンプルに考えれば,功利主義は利己主義の延長線上にあります.「自分だけ」か「自分プラス他人も」かの違いだからです.私が日本人を利己的だというのは,もっと正確に言えば,功利的な行動にまで発展していない,功利的な範囲が非常に狭い,という意味にもなります.よって,利己性だけが残ってしまうのです.ではこのブログで書いてきたことを簡単にまとめていきます. また,各項目と何かしの関連性のある記事をリンクします.ただ,過去の記事ほど考えが浅い箇所がありますが,ご容赦ください.

1.対話が下手である
自分の考えを相手に伝えるためには,正しい共通語を使い,論理的に説明しなくてはなりません.また聞き手も,相手の言葉を聞いてその意味を正しく理解する能力が必要です.言葉によるコミュニケーションは,功利を発生させるために重要な役割を果たします.なぜなら自分だけでなく,相手の利益にもなるような行動をとるには,相手のことを知って理解する必要があるからです.残念ながら,日本人はコミュニケーション能力が高くありません.例えば,「今日の晩御飯何がいい?」「何でもいいや」...これではコミュニケーションとは言えません.「今日は君が食べたいものでいいよ」と,本当にそう思ったうえで答えるのがコミュニケーションです.

  「対話の欠如」

2.お金の意味
備えあれば憂いなし.日本は世界有数の貯蓄大国です.貯蓄は主に,自分や妻や夫のため,子供たちのために行うものです.家族単位で考えるなら,それは賢明な手法かもしれませんが,社会全体からすると,家族単位で凍結されたお金がたくさん存在します.つまり,社会を動かしているお金は多くはありません.欧米の考え方は,お金は動かすもの(使うもの,投資するもの),動いたお金は社会を豊かにし,それが自分たちにも跳ね返ってきて結局利益がもたらせる,と考えます.このような違いは,欧米の投資家と日本の投資家を比べるとよく分かります.欧米の投資家は,本当にいいものを作る会社,優れたアイデアや技術を持っている会社,未来に対するビジョンを持っている会社を探し出して,投資する人が多くいます.そういう企業は成功する確率も高く,それが成功すれば社会に利益がもたらされて,自分もそれを享受できるからです.日本の場合は,どうやったら儲かるか,株価の動きばかりを気にする人や,戦略ばかりを練って,社会のビジョン,あり方を真剣に考える投資家は少数派です.基本的に金儲けのひとつの方法が株を買うことだと思っている人は多いでしょう.

  「お金について」
  「日本人の利己は功利を生めるか」

3.ホスピタリティ
ホスピタリティという概念を日本語に訳せば「おもてなしの心」になるのでしょうか.日本にもちゃんとこの概念があると思いますが,とにかく現在は希薄化している気がします.ホスピタリティは,ふるまう側のサービスと,受ける側の感謝の気持ちの高度なコミュニケーションだと思います.これが達成された場合,双方がとても気持ちよい時間を過ごすことができます.現在の日本では,客は「金払ってんだから,店員は客に尽くしてくれて当然」と思っていたり,店側は「決められた仕事だけやればいいんだ」と思っていたりします.双方に心の通い合いがありません.ですから,ホテルに節水シャワーヘッドが設置されたりします.

  「ホスピタリティ」

4.ジェンダー
ここには日本人男性の利己性を感じます.社会で生きていく(お金を稼いで食べる)という行為は,日本においては圧倒的に女性が不利ですが,決して平衡点を移動させようとしません.法の整備だけは敷いて,意識は改革されません.変えるには,政治経済の大部分の実権を握ってしまっている男性が変わるしかないのですが,女性の欠点を指摘するという手法で男性社会を守ろうとする男性がとても多いのです.

  「ジェンダー」
  「未舗装路」
  「見落とされる倫理観」
  「無責任な日本人男性」

5.生産者と消費者
日本の相当数の企業は,消費者を騙す方法にたいていの時間を費やしています.商品の本質で勝負しません.住宅業界,アパレル業界など,もう至るところに法律には抵触しないナチュラルな詐欺が存在します.これは企業が自社の利益を最優先しようとする傾向に起因します.社会の豊かさより自社の利益なのです.誇大広告が多いのも日本です.欠点を隠して,長所を並べ立てる広告はよく見ます.時には,自らブームを仕掛けて一儲けしようと考えます.さて一方,消費者と生産者は,表裏一体でもあります.消費者も本質的な理由付けなしに消費行動を起こしますので,問題です.減税とともにガソリンスタンドに並ぶ日本人がいます.100円ショップが大好きな日本人はけっこういます.バーゲンで押し合いをして,怪我をする人がいます.こう考えると,日本の消費者はとにかくお金を節約しようとする傾向に気づきます.貯蓄のためです.これは,上に書いた「お金の意味」の話しにつながります.

  「歪められた市場」
  「日本の住宅業界」
  「贅沢は見方」

6.些細なこと...
仏壇やお墓の花を,お参りをする生きている人間の向きに飾るのはなぜか.なんとなく故人が軽視されているように感じてしまいます.生きている人間が中心のように感じてしまうのです....親が子供に「飛行機が落ちるから静かにしなさい」と機内で注意します.過激な虚偽の理由を持ち出すことで,容易に子供を黙らせるためかと疑ってしまいます.「鬼がさらいに来るよ」「隣のおじさん怒ると恐いから静かにしなさい」も同じです.なぜ静かにしなければいけないのかの正しい説明は,親としては大変な作業です.極端なことを言うのが楽な方法のように感じます....時より「老後が寂しいから子供が欲しい」などという意見を聞きますが,これを利己的と言わずして何と言うのでしょうか.

  「ガソリンついに値下げ」
  「仏様に供える花」
  「飛行機が墜落する」
  「国立公園での出来事」


このように私は,実に様々な場所で,日本人の利己性を感じます.数え上げたらきりがありません.しかしこれは,先にも言いましたが,単に「功利主義にまで発展させられていない状態」ととらえることもできます.功利主義は,個人の利己性をある程度内包させられます.日本人が少しだけ功利主義を理解し,日常の些細な場所で実践できるようになれば,意外に日本社会は変わるかもしれないと思っています.この日本人と利己主義に関しては,今後も考え続けていくべき重要なテーマと考えています.また新しい考え,発見などあったら記事にしたいと思います.

 

テーマ : 日本文化 - ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

なるほど、個人的、家単位、企業単位の利己について理解を深めることができました。
日本人が特に利己的というより、功利的な側面を意識していないという状態でしょうか?
私も、日本人のお金の使い方については、前々から疑問に思ってたのです。
現代社会におけるお金とは、えりざべすさんの書かれているとおり、
単に、自分や家族のほしいものと交換できる通貨というだけでなく、
本当にいいものを作る会社、優れたアイデアや技術を持っている会社に投資し、
社会を豊かにするために使うものという側面があると思います。
別の見方をすると、自分はこの会社が良い、このアイデアが優れていると思う、
と意思表示をするためのものと、私は捉えています。
(民主主義の世の中なのですから、民衆の意思表示は大切です。)
そうは言っても自分は投資するほどお金を持っていない、
という人は多いでしょう(私もその一人)。
しかし、高額な投資をしなくても、ただ安いだけでなく優れたもの
(使い勝手の良いもの、長持ちするもの、環境に良いもの・・・)
を「選択して買う」という消費行動も、それらの品を生み出した人への投資になり、
結果的に豊かな社会と豊かな自分の人生を創造するもの、
つまり功利的な行動になりうると私は考えています。
そういった功利性を全く無視し、短絡的に安売り・バーゲンに
群がる日本人の姿は情けないですよね。
安物は、どこかに欠落がある、またはどこかに損をしている者がいるとみなすべきです。
それが例えば、発展途上国の人達だったり、ワーキングプアな日本の人達だったり、
劣悪な環境で飼われているウシやニワトリだったりします。

話は少しそれますが、
お金を、そういった「優れたものへの投資と意思表示」の権利と捕らえると、
男は仕事、女性は家庭、男性が充分稼いで家庭にお金をもたらせば女性は働かなくて良い
というジェンダーの考え方が、いかに現代の民主主義の世の中にふさわしくないかわかります。
この分業の考え方は、お金は家単位で消費するもの、家もしくは家族が
豊かであればよいという「家単位の利己」のみを前提としていると思います。
女性に家庭を大事にするなとは言いませんが、女性も労働を通して社会に貢献し、
また得たお金で優れたものへ意思表示をすることも必要ではないかと改めて思いました。
長いコメントですみません。

Shiroさん.

お久しぶりです.
そうですね,私も,日本人は利己的だと言うよりは功利的な側面まで意識が及んでいない,と考えています.先天的なものではなく,社会の中で親や学校の教育によって育まれていく性質なんだと...だから,ちゃんと理解して意識できれば功利性は現れてくると思っているのですが...

「安物はどこかに欠落がある・・・ウシやニワトリだったりします.」には強い共感を覚えます.本当にこういう考え方が今の日本には必要だと感じます.安くて栄養価も高くない飼料を延々食べさせられて卵を産まされるニワトリ,安い賃金で福利厚生も少なく働いているパートタイムの人たち...日本人の「1円でも安く」を根底でささえている動物や人たちには決して利益はないですね.非正規雇用などの社会問題,動物愛護,地球環境問題などなど,懸命に考え取り組んでいる人たちは日本にもいますが,すべてがバラバラのままです.功利主義的な考え方は,このようなバラバラの問題を関連づけて考えることが可能で,社会の在り方を全体としてシフトさせる力になるかもと思います.

ジェンダーの意見にも概ね同感です.これだけ核家族化しても,家単位での営みが日本の基本のように感じます.家というひとつのユニットに対して,一人の代表者,ひとつの家計.そのような考えのプロセスが,表面化しなくてもいまだ根強く残っており,このような考えは民主主義の思想とは全く相容れないです.女性が積極的にお金を投資できなければ,社会に女性の意見が反映されていないことになります.実際,日本の住宅,インテリアや生活空間,女性ファッション業界など,女性の感心が高い分野において,業界体質に大きな問題を感じてしまうのは,そういう女性の(投資による)意思表示が男性に比べて弱いからなのでしょう.私もこれは重大な問題だと思います.

コメントありがとうございます!

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